猫と学ぶ、はるまきの作り方

春巻ねこです。物語のようなものを書きます。書きながらの公開なので、随時加筆訂正しますが、大筋のストーリーは変わりません。この物語は、フィクション、です。

005 夫と子供の同級生の母親がダブル不倫を後悔した話

 

Misty

Misty

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 〜 「夢でも、うつつでも、ない」 〜

 

練乳みたいにねっとりとした重みのある霧が、全身にまとわりついてくる。

息をするたびにそれを飲み込んで、私は少しずつ、この世界の住人になってしまう。

 

一歩一歩足を踏み出すたびに、大丈夫、まだアスファルトの上にいる、と思う。

道を外れて森に入ってしまってはいない。

まだ大丈夫。

たぶん。


やがて霧の向こうから、低い音が聞こえてくる。

早かったり遅かったり、近づいたり遠ざかったり。

静かなエンジン音、何台かの車の。

近づいたり遠ざかったり?


霧の中で目を閉じて、耳を澄ましてみる。

今もし時間が引き伸ばされたり、ずれたり、順番を変えられたりしていても、気づかないなと思う。

そしてやがて唐突に、ひらけた場所に出る。


ラウンドアバウト

 

中央に小さな丸い草地があって、ドーナツ状の道路が周りを囲っている。

その道路からは何本かの道が放射状に伸びていて、いずれかの道から入ってきた車はドーナツを時計回りにぐるっと回って、また好きな道へと走り去ってゆく。

 

でも、さっきから、目の前を3台の同じ車が、何度も通り過ぎていることに気付く。

そのどれもが、どの道へも出て行く様子がないのはどうしてだろう。

そしてすぐそこを通り過ぎているはずの運転手の顔は、なぜかよく見えない。


霧の中を、ゆっくりと回る。

同じ車が何度も通り過ぎる。

メリーゴーランドみたい。


でも、ラウンドアバウトはメリーゴーランドとは違う。

どこか別の場所に向かおうと思えば、いつでもこの輪から抜け出すことができる。

はずなのに。


今は濃い霧に、色んなものが隠れているけれど。

でもなぜかこのメリーゴーランドは、浮かび上がって見えるけれど。


ぐるぐる回る。

誰も追いつかないんだ。

いつまでも、誰も誰にも追いつけない。

そしてどこにもたどり着かない。

永遠に同じ場所で、ゆっくりと回り続けるんだ。


この深い霧の、森のどこかで。