〜 寝言は寝てから 〜
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かわいそうなシロ。
ごめんね。
タカユキくんは、もうあたしのものなの。
ただ、タカユキくん優しすぎて、子供たちと別れる決心がつかなかった。
で、モタモタしてたらシロにバレちゃった。
あたしは逃げも隠れもしません。
不倫っていう形にはなってしまったけど、タカユキくんを愛してるの。
この世界で一番大事なことは、愛することでしょう?
もちろんシロには、タカユキくん代をちゃんと払うから。
「シロとはもう5年以上レスで、家庭内別居で離婚寸前、子供たちのために仕方なく一緒にいるだけ、本当はずっと、もっとしっかりした人と再婚して人生やり直したいと思ってた」
そんなタカユキくんとお互いの痛みを慰め合っていたら、愛し合うようになってしまったの。
浮気ばかりのムカつく夫とも、タカユキくんとの交際スタートから半年後には離婚したし、こちらはもう準備万端で、タカユキくんはいつでも身ひとつで来てくれればよくて。
タカユキくんとシロの子供たちの養育については、タカユキくんもちゃんとしたいって言ってるから、あたしたち2人で頑張って払っていくわ。
シロには子供たちをきちんと育てられないかもしれないから、こちらで引き取って育ててもいいと思ってる。
あたしたち、幸せになるね。
ああ、でも、あたしたちに欠けてたのはケジメだよね。
タカユキくんがちゃんとシロと別れたら、晴れてあたしたち一緒になれるから、それまでは辛いけど会わないようにするね。
はい、それで、気になるタカユキくんのお値段は?
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踏み込んだ後にあなたが言ってたのって、要するにこういうことだったよね。
かわいそうな人を救おうとして愛し合うようになってしまった、って。
慰謝料は払うから、って。
タカユキとわたしが離婚するまではもう会わない、って。
わたしにはあなたのことが、屋台で強気の値段交渉をする傲慢な人に見えてたよ。
あなたは、シロが望むようにしたいって言いながら、自分がこのテーブルをコントロールしてると思ってたんでしょ。
根っからの商売人で、ネゴシエーションはお手の物だもんね。
自分にハマり切ってる既婚男性と、その愚鈍な奥さんくらい、ピース オブ ケーキだと思ったんでしょ。
でもね、あなたは、商品のことも、商談相手のことも、実はなーんにも知らなかったの。
自分が知ってると思ってたことを何も知らないのを、知らなかったの。
こわいよね。
閉ざされた場所で2人きりで会うことしかできなかったから、対外的にも、相手にも、自分にさえもお互いに嘘ばかりついていた。
そして見つからない限りは誰にもその嘘を咎められないから、嘘をつくこと自体の罪悪感もどんどん希薄になっていった。
クズまっしぐら。
寝言は寝てから言えし。