〜 起爆装置を作動させないために 〜
タカユキはあんまりものを知らない。
興味のないことはまったく覚えないから。
だから、会話も受け売りが多い。
今回のことも、あなたの入れ知恵でほんとに家庭が破綻してたことにしようとした。
既成事実を作ろうとした。
その過程で、わたしたち母子は本当に傷ついた。
タカユキがキレるのは、もう仕方のないこととして、家族として受け入れてた、それまでは。
だから、わたしたち母子は三年前までは対処法がわかってたの。
経験的に言って、タカユキが不機嫌になった時に、上辺だけで褒めたり甘やかしたりすると起爆装置が作動するのを知ってたから、子供が生まれてからは思いっきりそれを押さえつけてた。
要するに、褒めたり甘やかしたりの逆。
偉そうにするな、甘えてくるな、って態度を取ってた。
起爆装置を作動させないために、穏やかな家族の在り方のために、そうしてた。
出来ることなら子供たちに、キレる父親を見せたくなかったから。
それに、たまに大爆発する人に対して、わたし手放しで優しくはもう出来なかった。
ちょっと話が逸れるけど、わたし、あなたにタカユキを押し付けなかったことを、あなたの子供たちからむしろ感謝されて然るべきな気がする。
まあとにかくそうやって、ちょっと天然だけど一生懸命なお父さん、時々怒りん坊になっちゃうけど、でも頑張り屋さんなお父さん、ってキャラだったの。
でもあなたが割りこんできて、甘やかし、入れ知恵し、タカユキは調子に乗っていって、この家族は壊れたの。