〜 降参! 〜
「タカユキさんとは一生連絡取り合いません。
一生、タカユキさんの家族の誰とも関わりません」
わたしとあなたの間の約束は、もうこれだけです。
示談書は、あなたとわたしの間ではもう無効なので。
あなたがこの約束を守るなら、わたしもひとつだけ残っているあなたとの約束を守ります。
妻子のいる人と連絡を取り合うのは、もう一切やめるべきだとは思うけど。
なにがどうなるか、相手がどんな人間なのか、予想もつかないことがわかったでしょ?
あなたはわたしのことを、タカユキが悪態をついていたとおりの仙人みたいな男おばさんで、仕方ないから抱いてやってる公衆便所みたいな存在だと思ってたんだよね?
でもタカユキは、あなたについても、酷いことをたくさん言ってました。
妻子がいるのに言い寄ってくるような既婚男性の陰には、何が潜んでいるのかわからない。
その人物が心にどろどろした何かを抱えていたとしても、邪魔の入らない場所でコッソリ交際していたら知りようがない。
ついこの間電話で降参!って言ったよね。
やっぱ勝負してたんじゃん。
容姿も学歴も家柄も勝ってるはずなのに、わたしの方が若くて有能なのに、わたしの方が女らしく従順なのに…って。
どうして降参することになったかわかんないでしょ。
子供のためじゃないよ。
だって、タカユキは完全にわたしたち母子を捨てる気満々で準備してたんだから。
踏み込まれる直前には、良心の呵責も振り切るほどの決意がほぼ固まっていたのだから。
わたしたち母子は、わたしの故郷に引っ越すことになってたんだから。
じゃあ、どうして踏み込まれて半年後にあなたは自ら土下座し、そのまた半年後には降参することになったんでしょう。
一生、吐くほど後悔しながら、答えを考え続けるといいよ。